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ブックマーク / honz.jp (51)

  • 『最古の文字なのか?  氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く』 - HONZ

    書は『最古の文字なのか?』がメインタイトルで、サブタイトルが「氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く」。一瞬、メインとサブが逆なのではないかと思ったほどであるが、これこそがまさに「名は体を表す」であった。 洞窟に入って壁画を見れば、誰だって巨大な牛やウマの絵に目が向くことだろう。たしかに絵のような芸術品は、太古の人々の生活を具体的なイメージとして捉えることができ、見ているだけで時間を忘れさせてくれる。 しかし、書の著者ジェネビーブ・ボン・ペッツィンガーの着眼はひと味違った。岩絵の脇に描かれた小さな幾何学記号の模様、そこへ注目したのだ。多くの人にとって見落とされがちな幾何学記号の集積が、やがて壮大なミステリーのように雄弁に語りかけてくることになるから、コミュニケーションとは奥が深い。 塵が積もれば山となるように、無意味も積もれば意味をなす。著者は、ヨーロッパ中の氷河期の遺跡を這いずり

    『最古の文字なのか?  氷河期の洞窟に残された32の記号の謎を解く』 - HONZ
  • 『漂流』平成の漂流事件、海で2度行方不明になった男 - HONZ

    書は、平成に起きたある漂流事件の詳細をつづったノンフィクションである。また、未解決行方不明事件を追うルポルタージュであり、沖縄における海洋民の成立と広がりを歴史的に考察する一書でもある。 1994年2月、一隻の漁船が連絡を絶った。沖縄のマグロ延縄船、第一保栄丸は、同年1月にグアムを出港、2月2日の無線を最後に連絡が途絶え、その後3月17日フィリピン沖、救命筏にて漂流しているところを現地漁船に救助された。37日間もの漂流、しかも乗組員全員が生還したという奇跡的な事例である。著者はこの漂流事件に興味を持ち、取材を始める。そして船長の自宅に連絡し、の口から驚愕の事実を知る。 「ノンフィクションのを書いている角幡という者なんですが、ご主人の村実さんはご在宅ですか」 富美子は少し返事をためらった後、「今、うちにはいませんので……」と力のない声で言った。 「…じつは、十年ほど前から行方不明にな

    『漂流』平成の漂流事件、海で2度行方不明になった男 - HONZ
  • 『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ

    「ディストピア」とはユートピアの反対語。理想郷じゃない場所のことだ。「日スゴイ」ならユートピアなんじゃないの?と思いながら読みはじめると、戦時下に行われたプロパガンダによって洗脳された日人の姿に戦慄させられる。言葉の力は強大だ、プラスに働いてもマイナスでも。 書には昭和初期から終戦までに出版された、当時の「日スゴイ」の中から「日主義」「礼儀」「勤労」など、現代にも通ずる日礼讃キーワードごとに、膨大なを吟味していく。こんなことが大真面目に語られていたかと驚くばかりである。 そもそも「日スゴイ」のネタの原型はどこにあるのか。探っていくと見つかったのは週刊新潮の版元、新潮社が出していた月刊総合雑誌「日の出」であったのだ。 満州事変を契機とする日の国際連盟脱退を受けた「日の出」1933年10月号には「世界に輝く日の偉さはこゝだ」という特別付録が付いていた。地球上に全く孤立無援

    『「日本スゴイ」のディストピア 戦時下自画自賛の系譜』最近、再び増殖中 - HONZ
  • 欲しかった言葉ときっと出会える『翻訳できない 世界のことば』 - HONZ

    心に湧いてくる感情にぴったり合う言葉が見つけられない…。 言葉で表現しようとすると、ひどくまどろっこしくなってしまう…。 誰しもそんな経験を一度はしたことがあるのではないだろうか。 私たちは言葉があることで、思考することができ、他者と”目に見えないもの”を共有することができる。一方で、言葉によって私たちの思考は規定され、その範疇をはみだす部分については、表現することをあきらめざるをえない場合もある。 だが、そんな「日語では表現できなかったもの」を的確に表す言葉や、意識すらしたことがなかった世界を示す言葉に、外国語を学ぶなかで出会うことも少なくない。 書は、世界の様々な国に暮らした経験をもつ筆者が、「他の国のことばではそのニュアンスをうまく表現できない『翻訳できないことば』たち」を世界中から集めてまとめた一冊だ。 *** その「単位」ありなんだ・・・ 長さの単位にはメートルの他にマイルや

    欲しかった言葉ときっと出会える『翻訳できない 世界のことば』 - HONZ
  • 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 ダイナミックな文化論を軽やかな足取りで - HONZ

    高野 秀行の最新刊は、固定観念の外側を探検する。テーマはずばり、納豆とは何か? ともすればアカデミックに着地してもおかしくないテーマを、おなじみ高野流の足取りで核心へと迫っていく。このアプローチをアカデミック界の鬼才は、どのように評したのか? 昨夏『世界の辺境とハードボイルド室町時代』で魔球対決を繰り広げた清水 克行氏に、書のレビューを寄稿いただきました。(HONZ編集部) 私自身もそうだが、東日に生まれ育った者ならば、誰しも納豆については、大なり小なり一家言あるのではないだろうか。関西の知人から納豆はダメだという話を聞くたびに、心の中の優越感を隠し切れないし、たまに外国人で納豆がべられるという人に出会うと、「なかなかやるじゃないか」と、急に親しみを覚えたりする。その根底には、あのニオイとネバリの良さが、そう簡単によそ者にわかってたまるか、という思いがある。納豆はクセがあるだけに、他

    『謎のアジア納豆 そして帰ってきた<日本納豆>』 ダイナミックな文化論を軽やかな足取りで - HONZ
  • 『闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録』 - HONZ

    やっと終わった。文庫の作業が終わったという意味だけではない。ふだんは見ないようにしていながらも、部屋の片隅にずっとうずくまっていた童子のような存在と向かい合い、やっとうちから出ていってもらうことができたような感覚に今私は浸っている。自分の仕事を褒めるのは抵抗があるが、いい内容だと思う。その満足感、責任を果たせたことの安心感に浸るとともに、童子がいなくなったことの寂寥感もある。 今から十数年前。雑誌の連載で上野の男娼に話を聞いてみようと思った。さして深いことを考えていたわけではなく、ちょっとした思いつきに過ぎなかったのだが、この時の内容がすさまじく面白かった。この面白さは2人の個性に負うところも大きいのだが、彼らは、彼らの存在を越えて私に大きな課題を与えてくれた。 古い雑誌ではよく見ていたノガミ(※上野)の男娼とこの2名がきれいに重なった。その時代から立っていたわけではないのだが、その世代の

    『闇の女たち 消えゆく日本人街娼の記録』 - HONZ
  • アメリカの図書館戦争 『古書泥棒という職業の男たち』 - HONZ

    映画になりそうな犯罪ノンフィクションはいかが? 主人公は一癖もふた癖もある泥棒とガッツのある図書館司書たち。あの手この手の知恵をしぼる泥棒組織と、それに対して、「図書館特別捜査員」として奮闘する司書。「稀覯」をめぐる攻防の舞台はニューヨーク! アメリカ経済が上り調子となった1920年代、1929年の大恐慌を経てしばらくの間1930年代まで、図書館史上最悪の盗難の時代は続いた。当時のアメリカでは、一部の古書の値段が天井知らずで高騰し、のんびりした各地の図書館は「一年を通して、どんな天候だろうが、すぐ換金できる作物の成る畑」とまで言われるほど、泥棒に恰好の餌を提供していたのだ。 その背景には、経済状況はもちろんだが、今と違って、古書、特に「稀覯」(限定や特集事情のあるなど、手に入りにくいのこと)の購買層が、一部の読書家に限らず非常に広かったため、売買の規模が大きくなり、マンハッ

    アメリカの図書館戦争 『古書泥棒という職業の男たち』 - HONZ
  • 『1998年の宇多田ヒカル』音楽には今、言葉が足りない - HONZ

    タイトルが秀逸。「1998年の宇多田ヒカル」という単語を目にしただけで、様々な情景が昨日のことのように蘇ってくる。だが皮肉なことに、それは音楽に心を躍らせるという経験が、その時から更新されていないことを意味するのかもしれない。 1998年が、いかにエポックな年であったかを示す事実はいくつもある。1つは日音楽業界史上最高のCD売上を記録した年であるということ。そしてもう1つは、現在においても日音楽シーンにおけるトップ3の才能と目される音楽家が、すべて同じ1998年にデビューしたことである。それが、宇多田ヒカル、椎名林檎、aikoの3人だ。 書は「史上最も同期に恵まれていた」3人に浜崎あゆみを加えた女性ソロアーティスト達を題材とし、1998年からの18年間が音楽史においてどういう意味を持つのか紐解いていく。単に当時をノスタルジックに振り返るだけでなく、そして現在の状況を憂うだけでもな

    『1998年の宇多田ヒカル』音楽には今、言葉が足りない - HONZ
  • 『戦場中毒』恍惚感という現実 - HONZ

    新聞社が社員を派遣しない危険地帯に潜り込むフリーランスの戦場カメラマン、横田徹氏の著書である。今年1月のISISによる邦人人質事件の際には、2週間で36テレビ番組に出演し、さらに新聞や雑誌の取材を10受けていたというので、名前を知る人も少なくないだろう。 アフガニスタン、パキスタン、シリア、パレスチナ、リビア、ソマリア、カンボジア、コソボ……。著者が撮影に訪れた場所を挙げるだけで、背筋が寒くなってくる。書かれる戦場事情は、報道ではなかなか伝えられないものが多い。特に、10回以上従軍取材を行っているイラク戦争の実情については詳しく書かれている。 戦場と一口に言っても、その生活環境は場所によって開きがある。最前線の前哨基地では、3度の事はほぼ保存のMREのみ。水道も無いため、体はペットボトルの水で洗うしかない。一方で、最前線や僻地を除けば、アフガニスタンやイラクのアメリカ軍基地では、

    『戦場中毒』恍惚感という現実 - HONZ
  • 『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』知の力を信じるということ - HONZ

    日中戦争当時、傀儡国家・満州国の最高学府として設立された国策大学が「満州建国大学」である。満州国の将来の指導者たる人材の育成と、満州国の建国理念である「五族協和」の実践の場として、日人・中国人・朝鮮人・モンゴル人・ロシア人といった様々な民族から選抜された若者たちが6年間寝起きを共にしながら切磋琢磨する。すべて官費で賄われ授業料も免除という条件の良さもあり志願者が殺到、2万人の中から選ばれた150人が入学を許されるという狭き門で、まさに彼らはスーパーエリートだった。 満州建国大学は「五族協和実践の成果」を国際社会に発信するための広告塔でもあった。国際化をうたいながら在校生はほとんど日人だった各地の帝国大学とは違い、日人は定員の半分に制限され、残りは各民族に割り当てられる。カリキュラムも日語や中国語の他、英語ドイツ語ロシア語・モンゴル語等々自由に学ぶことが出来、禁書扱いになっている

    『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』知の力を信じるということ - HONZ
  • 『数学する身体』僕が身体で感じていたことは、嘘でも無駄でも無かったんだ - HONZ

    発売されるやいなや大きな反響を呼んでいる、『数学する身体』。お待ちかねの客員レビュー第三弾は、はてな株式会社の近藤淳也さんが登場。「数学は情緒だ」という独立研究者・森田真生の言葉を聞いた時、近藤さんが直感的に感じたものとは何だったのか? (HONZ編集部) ※客員レビュー第一弾、第二弾 森田くんが初めて書いた。「数学する身体」。 わざわざ「を届けたいので」と、会社の近くまで足を運んでくれて、ランチを共にしながら渡してくれた。 構想ができてから書き上げるのに4年かかったという。 もともと、文章を書くときにはとんでもなく集中して、丁寧に言葉を積み上げて、何度も何度も読んで味わえるような、スルメみたいな精緻な文章を書く森田くんが、初めて1冊のを書いた、という。 もうそれだけで、読む前から、これはすごいだ、ということは分かっていた。 すごいというのは、とにかく、中身云々の前に、通常で

    『数学する身体』僕が身体で感じていたことは、嘘でも無駄でも無かったんだ - HONZ
  • 『殺人鬼ゾディアック 犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実』ミステリーと家族の再生 - HONZ

    アメリカ国内で有名な未解決事件のひとつにゾディアック事件といわれる事件がある。1966年から1974年にかけて複数の男女が白人の男に襲われ、猟奇的な方法で6人が殺害された事件だ。この事件を世間に印象付けた理由はゾディアック自身が犯行後に警察を挑発し嘲笑するような電話や自分の名が書かれていると主張する暗号文をマスコミに送り付けるなどし、世間に大きく扱われるように、犯人自身がその犯行をプロデュースしていた点だ。 また犯人像にも特徴的な点が多い。例えばオペレッタ作品の「ミカド」のセリフを引用し、高度な暗号のテクニックを駆使するなど、かなり教養があり知的水準が高かったことが窺える。さらに殺した相手を来世で奴隷にできるという思相に強いこだわりを見せているなど、一種、独特の世界観を持っている。また、電話で自らの犯行を通報した際には、イギリス訛りの英語を喋っていた。 多くの特徴と、生存者を含む数多の目

    『殺人鬼ゾディアック 犯罪史上最悪の猟奇事件、その隠された真実』ミステリーと家族の再生 - HONZ
  • 『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』初期近代印刷文化の興亡と万有書誌の夢 - HONZ

    ここに翻訳をお届けする『印刷という革命──ルネサンスのと日常生活』は、西欧印刷史の泰斗アンドルー・ペティグリーが満を持して2010年に世に問うた、実にスリリングな初期近代メディア文化史の傑作である。 原著で400ページを超えるその浩瀚なヴォリュームと射程の広さ、扱うトピックの目くるめく多様性にもかかわらず、原題は『ルネサンスにおける』(The Book in the Renaissance)と意外なほどシンプルで、そのややもするとぶっきらぼうにも見える骨太な表題のうちに、著者の自信のほどがうかがえる魅惑の一冊だ。邦題の選定にあたっては、そのあたりの含みをうまく伝えられないものかと苦心したが、結局は書の内容を要約した『印刷という革命』に落ち着いた。 ペティグリーは現在、イギリスのセント・アンドルーズ大学歴史学講座で教鞭をとる気鋭

    『印刷という革命 ルネサンスの本と日常生活』初期近代印刷文化の興亡と万有書誌の夢 - HONZ
  • 『インテル 世界で最も重要な会社の産業史』営業力か、技術力か、宣伝力か。インテルが教えるもっとも会社で重要な部署。 - HONZ

    「コンピューターの性能は18か月ごとに指数関数的に上昇する」。1965年にインテルの創業者の一人であるゴードン・ムーアが書いた論文の中にあったグラフは「ムーアの法則」として、今日までコンピュータ業界の指標となっている。そのインテルのインサイドストーリーを描いた『インテル 世界で最も重要な会社の産業史』が出版された。訳者で元日経ビジネス記者の土方奈美さんが、書の読みどころを紹介する。(HONZ編集部) 私の父とインテルには浅からぬ縁がある。 1995年秋、日の大手電機メーカーで働いていた父は「チップウィスパー」というオーディオプレーヤーを考案した。記憶媒体に当時主流であった磁気ディスクではなくフラッシュメモリを使い、携帯性を高めたのが特徴だ。 インテルに最先端の32メガビット・フラッシュメモリの提供を打診したところ「製造が安定していないので、100個集めるのも難しい」との反応だった。だが

    『インテル 世界で最も重要な会社の産業史』営業力か、技術力か、宣伝力か。インテルが教えるもっとも会社で重要な部署。 - HONZ
  • 周到に計算された「狂人国家」というブランディング戦略 『北朝鮮の核心』 - HONZ

    北朝鮮は、統計上はアフリカの小国ガーナに似ている。2010年の人口は北朝鮮が2,440万人に対してガーナが2,470万人。一人当たりGDPはそれぞれ1,800ドルと1,700ドル。しかし、国際社会から受ける注目度や、先進国から引き出してきた援助の額、政治的譲歩において、北朝鮮はガーナなど比べ物にならない大成功を収めてきた。この差はどこから来るのだろう。 書の序章には「驚異的な理性の国」というタイトルが付いている。もちろんそれは北朝鮮のことだ。活用できる資源もなく、経済は死に体、時代遅れのスターリン主義と君主制を貫き、核兵器を積極的に威嚇手段として用いるその様は、周辺国の人々から「理解不能な狂人国家」と思われている。ところがこの国の指導層は、自分たちが何をしているのか、実は完璧に分かっているのだ。 著者アンドレイ・ランコフは、ソ連に生まれ、留学生として平壌に住んだ経験もあり、現在は韓国の国

    周到に計算された「狂人国家」というブランディング戦略 『北朝鮮の核心』 - HONZ
    akakit
    akakit 2015/08/22
    「この国の指導層は知っている。サダム・フセインがアメリカに倒されたのは、「大量破壊兵器を持っていたからではなく、持っていなかったから」だということを。」
  • 『慟哭の谷――北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』惨劇から100年 - HONZ

    獣害史上最悪として知られる「北海道三毛別羆事件」。死者8人を出したこの惨劇が起きたのは、大正4(1915)年。時は第一次世界大戦下、この地に入植していた人々を恐怖のどん底にたたき落したのは、体重300キロをゆうに超す巨大な人喰い羆であった。 書は営林署に勤務していた著者が、事件後46年目に当地区の担当になったことをきっかけに、生存者や遺族、討伐隊に参加した人たちから入念な聞き取り調査を行った記録である。書の内容は、吉村昭によって『熊嵐』として小説化もされている。 12月――野山一面が雪に覆われ、ヒグマは森で冬の眠りについている……はずだった。最初の犠牲者が出たのは、開拓部落の太田家。寄宿していた男が家に戻ると、男の子が座ったまま眠っている。呼びかけても返事がないので肩を揺すったとき、男の子は喉の一部を鋭くえぐられ、こと切れているのに気がついた。一緒に留守番していたはずの、この家のもい

    『慟哭の谷――北海道三毛別・史上最悪のヒグマ襲撃事件』惨劇から100年 - HONZ
  • 『耳鼻削ぎの日本史』”やさしさ”から”見せしめ”まで - HONZ

    “耳鼻削ぎ”とは穏やかではない。というか、野蛮。現代人はそう感じるだろう。日歴史上で耳や鼻を削ぐといえば、戦国時代の話かな。敵の首をいくつとったか戦功を証明するのに、首だと持って帰るには重いから耳。いや耳だと左右二つ削いで数をごまかせるので鼻になったんだっけ。いやはや、戦国時代は血腥い…。 著者は日各地の“耳塚”“鼻塚”を訪ね歩き調査する。無惨に討たれた武士たちの耳や鼻が何百と葬られたというのなら、さぞや怨念が染み付いているだろう、怨霊話もあるだろう。耳や鼻を削ぐという行為の意味もみえてくるだろう、と思いきや。 なぜかどこへいっても「耳の神様が耳の聞こえをよくしてくださるところ」という話ばかりだったのだという。 私は日中の耳塚・鼻塚を訪ねてまわり〜(中略)けっきょくのところ、どこの耳塚・鼻塚からも不気味な怨霊譚が聞かれることはなかった。それどころか〜(中略)土地の人から愛され、ご利

    『耳鼻削ぎの日本史』”やさしさ”から”見せしめ”まで - HONZ
  • 異例の大ヒット!日めくりカレンダー『まいにち、修造!』の売れ方を徹底分析! - HONZ

    この時期、出版業界では各社から上半期ランキングの発表が相次ぎます。『妖怪ウォッチ』『フランス人は10着しか服を持たない』などのタイトルが並ぶ中、存在感を見せていたのが『まいにち、修造!』。この読者層分析を!という要望があったため、今月はこのカレンダーを分析してみたいと思います。 最近では4月始まりの手帳が増えてきてシェアを上げてきていますが、まだまだカレンダーは年末に購入するものという意識が一般的です。 この『まいにち、修造!』は1〜31日を毎月繰り返し使える万年カレンダー仕様。いつまでも使えるし、いつからでも使えます。これがうけて異例のロングランヒットとなりました。

    異例の大ヒット!日めくりカレンダー『まいにち、修造!』の売れ方を徹底分析! - HONZ
    akakit
    akakit 2015/06/14
    72%を女性読者が占め、うち36%が40代
  • 『SAPEURS(サプール)』コンゴのオシャレ男子は、服を信じて福を呼ぶ。 - HONZ

    世界最貧国の一つ、コンゴ共和国。ここにサプールと呼ばれ、人々の羨望と尊敬を集る集団がいる。平日は普通に働いているのだが収入のほとんどを洋服に費やし、週末になるとハイブランドのスーツを着こなし街を闊歩するという。 書は、そんな彼らの”NO FASION,NO LIFE.”な日々を記録した写真集である。写真家のダニエーレ・タマーニが長い時間かけて築いた親密な距離感を収めたスナップには、写真の数だけ流儀がある。色とりどりのサプール達が、己のこだわり、価値観や規範を饒舌に語りかけてくる。

    『SAPEURS(サプール)』コンゴのオシャレ男子は、服を信じて福を呼ぶ。 - HONZ
  • 『日本スターバックス物語』とフォロワーの物語 - HONZ

    「スタバにハズレなし。」と、ビジネス書界隈では昔からよく言われている。スターバックスの実質的な創業者であるハワード・シュルツが書いた『スターバックス成功物語』、『スターバックス再生物語』はどちらも名著と呼んでいいものだし、文庫化されたハワード・ビーハー(元スターバックスインターナショナル社長)の『スターバックスを世界一にするために守り続けてきた大切な原則』などもおもしろい。 そんなスタバに新たな名著が加わった。『日スターバックス物語』である。日版『スターバックス成功物語』と言えばわかりやすいだろうか。スターバックスがどのような経緯を経て、日で創業することになったのかを、スターバックスコーヒージャパンの立ち上げプロジェクト総責任者が綴ったものだ。スターバックスにラブコールを送る際にハワード・シュルツに出した手紙に書かれた「コーヒーはおいしいけど、べ物には改良の余地あり」という文言

    『日本スターバックス物語』とフォロワーの物語 - HONZ