◇飛田新地(大阪市西成区) 大阪市阿倍野区と西成区の区境は階段が多い。上町台地の段差がそのまま区境となっており、街の様相もくっきり分かれる。東側の阿倍野区は、台地に高層マンションや大規模商業施設が建ち並ぶ。一方、西側の西成区は区境の際に「東洋最大の遊郭」といわれた飛田新地が残り、商店街も現代的なファッション化を拒むかのようなたたずまいだ。昨年10月、11年に及ぶ飛田新地の取材をまとめた「さいごの色街 飛田」を出版したフリーライターの井上理津子さん(56)に、この不思議なエリアを案内してもらった。 地下鉄動物園前駅で降り、商店街「動物園前一・二番街」を抜けると、飛田新地の入り口「大門」がある。「アールデコ調のデザインでしょう」と井上さん。飛田遊郭ができたのは大正時代。「ハイカラ」を追求する街のイメージ戦略があったのかもしれない。大門の脇の説明板には「昭和33年に飛田遊郭は廃止になりましたが、
【書評】『さいごの色街 飛田』(井上理津子著/筑摩書房/2100円) 【評者】河合香織(ノンフィクション作家) * * * これほど矛盾に満ちた街はあるだろうか。 昔日の遊郭の名残をとどめる大阪・飛田は壁に囲まれた400メートル四方の土地で、そこに160軒近くの「料亭」が並び、東西にのびる道には「かわい子ちゃん大通り」「青春通り」「年増大通り」などという名前がつけられている。客が料亭でビールを飲むうちに、急に客と女給が恋愛感情に陥ったという言い分で性的サービスが行なわれている。そんな色街を女性のノンフィクションライターが足かけ12年かけて訪ね歩いた。 なぜそんなに時間がかかったのか。ひとつには、飛田は取材拒否の街だからである。「ノーピクチャー」の貼り紙がされ、写真を撮ろうものなら罵声が飛び交う。何を尋ねても「いらんわ」と断わられ続ける。それは“やってはいけないこと”を地域ぐるみで行なってい
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く