<なぜ民主主義は生き残れたか> 1930年代のヨーロッパを見守っていた知識人の多くは、「未来は共産主義かファシズムの手の内にある」と考えていた。実際、「左はスターリンのソビエトに、右はヒトラーのドイツとムッソリーニのイタリアに固められ、(政治的に)包囲されていた西ヨーロッパのリベラルな民主主義に生き残るチャンスはない」と考えても不思議はなかった。すでに中央・東ヨーロッパ諸国の多くは、権威主義体制か、さまざまな形態のファシズムに屈していた。 大恐慌という未曾有の危機への対策をみても、(議論と合意を必要とする)リベラルな社会が実施できるささやかな対策よりも、共産主義やファシズム体制による上からの大胆な施策のほうがはるかに効果的であることが立証されつつあった。当時から21世紀初頭にいたるまで、イベリア半島のタホ川から、エブロ川、ドナウ川を経て、ポーランドのヴィスワ川にいたるヨーロッパ全域が民