【黒沢清監督『クリーピー・偽りの隣人』】 黒沢清監督の『クリーピー・偽りの隣人』がすばらしい。もともと前川裕の原作『クリーピー』に黒沢テイスト的な細部があったのだろう。黒沢監督と脚本の池田千尋は、原作の前半を中心に物語を再構成、2時間強の全体におさめるよう作劇を磨きあげた。 「隣人ホラー」と一括されてしまいそうだが、たとえば現在TV放映中、ユースケ・サンタマリア主演の『火の粉』などとは成り立ちがちがう。「隣接」が「合致」する瞬間の、形而上学的な恐怖が熟考されているのだ。隣接原理が換喩、合致原理が寓喩だとすると、黒沢の演出では換喩的寓喩、あるいは寓喩的換喩が映画にどうあるべきかが追究されている。細かい作品分析は劇場公開時にもういちどみてどこかの媒体用におこなうつもりなので、以下はメモ書きていどで思索ポイントを列挙するにとどめる。 西島秀俊は四年前までは刑事で、しかも犯罪心理学者的な傾向をもっ