|縷々| |雑記| 昼時の忙しさが一段落して洗い場を片付けて居たら、カウンターの方から声がして「こんにちはー」と覗き込む人が在る。「はーい」と出ていくと、ひょっこり、懐かしい顔が見えた。あらー、誰かと思えばY君じゃないの! 細長い輪郭にきょろっとしたまん丸の目。頬の辺りは少しだけふっくらしたけれど、そこに立って居たのは紛れも無い、Y君その人であった。「すごいなあ、すぐ分かりました?」そりゃ分かるわよ、全然変わらないものー。「いやぁ、僕のこと憶えててくれたんだ」当たり前でしょ、ちゃんと覚えてますよ。 Y君は十年程前に支店へ異動してきてすぐに、うちの担当となった地方銀行の銀行マンだった。当時二十五・六歳だったろか、製造業の現場から金融業へ転職と云うユニークな経歴の持ち主で、再び異動となるまでの二年余りの付き合いだったのだが、それまでの担当の誰とも違って居たし、現在に至ってもY君の後に彼のよな人