昔から、現実の人間よりも、本に親しむことの方が多かったわたしは、作家をひどく身近に感じていました。あとがきをもとに、この本を書いたのはどんな人だったのだろう、と空想をめぐらせるだけでなく、口絵写真や奥付けの生没年まで見ては、こんなおもしろい話を考えだした作家を、親しみとあこがれをもって眺めていたのでした。 繰りかえし読むうち、主人公の活躍ばかりでなく、ほんの一場面しか出てこない、それでも印象的な役割を果たす人々に心ひかれるようになります。英雄的な主人公に出会いさえしなければ、平凡でつつましい人生を送っていたはずなのに、出会ったばかりに、主人公をかくまったり、助けたりして、大きく運命が動かされてしまうような人。主人公を送り出したあとは、そういう人々は物語から消えていきます。そういう人は、それからあと、どうなったのだろう。主人公を追う敵の群れに襲われたり、厳しい尋問にさらされるようなことはなか