ハチャメチャなのにキラリと光る人。そういう人に惹かれる。この『美は乱調にあり』の登場人物たちが皆そうだった。 伊藤野枝。彼女は「空気を読む」ことはこれっぽっちもしない、ゴーイング マイウェイ。女性だけで作る文芸誌「青鞜」を、20歳そこそこで平塚らいてふから引き継いで背負って立った情熱家だ。 伊藤の夫の辻 潤も面白い。伊藤の通う学校の英語教師だったが、伊藤といい仲になって、学校にいられなくなる。後にダダイズムを代表する人物となる。 伊藤が辻の次に行動をともにしたのが大杉 栄。彼は“過激思想”の持ち主ということで何度も投獄されるが、その度に、獄中でフランス語やらエスペラント語やらをマスターしてしまうという強者。彼に言わせると「一犯一語」。吃りが激しかったが「十カ国語でどもってやる」と豪語したとか。四六時中警官が張りついているが、彼らとも仲良くなって、自分の荷物を運んでもらったりしたというから笑