でも、現実にそんなことは可能なのか? 働くのは当たり前のことで、私たちは何の疑問も持たず労働にいそしみ、日々を生きている。そこに揺さぶりをかけてくるのが、今回紹介する『はたらかないで、たらふく食べたい 「生の負債」からの解放宣言』(タバブックス)だ。 著者の栗原康は、アナキズム研究を専門とする政治学者。本書は、アナキストの大杉栄とその内縁の妻で女性解放運動家の伊藤野枝、一遍上人、はたまたクエンティン・タランティーノなどの思想や作品を軸に自身の労働観や恋愛観を綴った、ちょっと風変わりなエッセイ集である。 「はたらかざるもの、食うべからず」を疑え! この本のベースにあるのは、「今の世の中、生きにくいよね」という不満だ。1970年代初頭に起こった第一次石油ショック以降、日本が福祉国家から新自由主義への転換を図っていく過程で、労働倫理も変化していったという。「仕事は辛いが、正社員として頑張ればちゃ