朝晩がすごしやすくなりますと否が応でも「豊穣の季節」を意識するところでございまして、どちら様も夏の賑わいなど取り捨てて、秋のたくらみに思いをはすところで御座います。 浪士様に置かれましては、早、秋の目論見など遠の昔に済まされて、段取りも半ばと気の早いところで御座います。 海の上にしか季節の展開が考えられぬ釣り師にとりまして、海はまだ真夏で御座います。海の中と申しますのは地上の気候がおよそ一月遅く反映されるものでありまして、今はまだ夏は盛りということで御座います。 早々とでは有りますが、夏の状況から秋の展開を推測いたしまして、作戦を立てると言う事になりますが、これは釣り師の都合のいい手前勝手な思惑で御座います。 大概は予期せぬ展開となって、修行半ばの釣り師に更なる苦行を強いるので御座います。 浪士様は何故修行苦行をなさるのかと言いますと、それは将来立派な一本釣りの漁師におなり遊ばすためであり