[ cinema , cinema ] 黒沢清は、B級映画とジャンル映画でデビューした多作の映画作家だが、彼は、国際的な舞台で次々に評価される、異論を挟む余地のないほどに個人的な作品世界を築き上げてきた。彼は恐怖と不安の映画作家だと考えられてきたが、恐怖映画の諸々の規則が、彼にあってはしばしば、それを通して日本の文化的な歴史と社会的な現実を垣間見せるプリズムにもなっている。その演出術は、自らの映画から、これまで実現されたことのない極限の恐怖を産み出すのに貢献している。たとえ黒沢清が、文字通りのジャンルの束縛から喜んで離れる術を知っていたにせよ、彼の映画は恐怖の物語であると同時に、深淵で微妙な哲学的な疑問である。 黒沢清は、おそらく映画においてもっとも困難なことに成功しているひとりだ。つまり、ジャンルの諸形式から滋養を受けながらも既存のカテゴリーを乗り越え、原初的で夢幻的な感覚をもっとも高次