先日おこなわれたホン・サンスのヒット祈願飲み会の席で、ひとりだけホン・サンスが満席かなんかで別の映画を見に行ったひとがいて、感想を聞いたらまれに見るひどさだと言うのだけど、どんなもんなのかの説明を聞いているうちに、逆に見たい欲がどんどん高まってきてしまったのだった。以下、簡略化したやりとり。 A「基本的には主役のふたりのアップが多くて……」 B「それってドライヤーのジャンヌ・ダルクっぽいな」 A「誰の視点なのかわからない海や空のショットが頻繁に挿入されるし」 B「なんかゴダールみたい」 A「全体には余白が多くてぼんやりした感じで、見る側はそこに自分の心情や経験を投影するような映画だよ」 B「ホン・サンスだ!」 それで居ても立ってもいられなくなって、チケット・ショップで買った前売券を口にくわえてさっそく見に行ってみると、上に挙げた作家たちの痕跡がたしかに見て取れるだけでなく、タクシーの窓や病