欧米や東アジアでは、政治家の高学歴化が進んでおり、エリート意識丸出しの政治に対する反感が国民のあいだで高まっている。ところが日本では、良くも悪くも政治家の高学歴化がそれほど進んでいないという。 いったい、それはなぜなのか――。日本思想史を専門とする河野有理・法政大学教授と、アメリカの反知性主義を研究してきた森本あんり・東京女子大学学長が、新潮選書から刊行された話題書『「反・東大」の思想史』(尾原宏之、新潮選書)を参考に、日本における反知性主義の伝統について対談しました。 *** ■日本の知的伝統は「反・科挙」? 河野:日本思想史研究者の尾原宏之さんが刊行した『「反・東大」の思想史』(以下、『反・東大』と表記)という本が話題になっています。エリート養成機関である「東大」に対抗しようとした教育者や思想家を描いた本ですが、これは森本さんが書いた『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』(20