ハリウッド映画には、アート的な人間ドラマというジャンルがあります。小説で言えば、純文学的なカテゴリであり、マーケットとしては大きくはありません。その一方で、こうしたアート的な映画、あるいはその中での演技というのは、それがオスカーの対象になることは多いわけです。 ですが、それは賞レースに組み込むことで、本来は小さな市場しかない作品群をムリに売り出しているわけではないのです。こうしたジャンルの映画があり、そこで人材を鍛えるというシステムがなければ、ハリウッドというビジネス全体のクオリティが確保できないわけで、その意味ではこうしたアート系の映画を、アメリカの映画産業としては真剣に制作しているのだと言えます。 悪いことではありません。むしろ、必要なことだと言って良いと思います。日本で言えば、古典芸能の世界と芸能界の関係に近いかもしれません。また、こうしたアート系の映画で活躍する「演技巧者」の人々は