【有本香の以毒制毒】 先週来、身近なところで奇妙な「炎上」が起きていた。出版社「幻冬舎」の見城徹社長が自身のツイッターで、ある人(=本稿ではT氏とする)の著書の実売部数を公表したことで批判を浴びた一件である。見城氏は当該ツイートを削除し、謝罪した。 業界界隈(かいわい)の一部の人たちが大騒ぎした一方で、世間の人々からは「書籍の実売部数公表のどこが問題か分からない」という疑問の声が挙がった。 問題視された理由の1つは、出版業界の因習による。通常、出版社と著者の間で「部数」といえば印刷部数を指し、それにより著者への印税額も決まる。印刷された自著が、実際何部売れたかには、関心すら持たない著者が少なくない。出版社側も、著者への気遣いから実売数を口にしない