そして、また、ふと思い出す。 台所にいたBさんに向かって夫が激しく怒鳴った時、廊下側の窓が開いていたことに気がついた。風に揺れるカーテンの先に隣の独居男性の視線があった。 一人暮らしの老人は子どもが泣くと、どんどんと壁を叩く。確かに長男の泣き声は響くから、迷惑をかけていないとは言わない。何度か謝りに行ったこともある。それにしても「虐待」で通報とは。 「"アザ"はお父さんですか?」 夫婦が別々に呼ばれてヒアリングをされる段になるとそう聞かれた。長男が自分でお尻の下にブロックを敷いて座った所が、アザのようになっていたのは知っている。それがなぜお父さんがやったとなるのだろうか? この日から5週35日間、Bさん夫妻は一度も子どもたちに会えず、どこにいるのかさえ知らされなかった。 長男には投薬が必要だったが、そのことすら児童相談所は把握しておらず、これがもし別の病気だった場合はそれこそ命にかかわるの
