別世界、別次元を楽しむための小説の一節に不意にドキッとさせられることがある。「これ今、私の目の前で起こっていることじゃん!?」「あの生意気小僧、この主人公にそっくりだな。」「あのおばさんも確かにこんな感じだった。」「これ今の日本の状況と同じだな。」 フランス文学の面白いところは100年以上前に他国で書かれたものなのに、現在の日本を正確に捉えていて、現実世界とシンクロしながら、私の悩み相談の解決策を掲示してくれるほどリアルなところだ。 本書の著者、鹿島茂は、本好きなら誰もが知るフランス文学者であり、フランス文学や俗世に関して100冊以上本を世に送り出している。私は、『馬車が買いたい』『とは知らなんだ』などは大好きで、『パリ、娼婦の街』や『モンマルトル風俗辞典』を読んでやたらとフランスの娼婦文化について詳しくなったり、『鹿島茂 大読書日記』で新刊から足が遠のいてしまい、戻ってくるのに必死だった