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ブックマーク / honz.jp (13)

  • 『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ

    ロビン・ダンバーは、彼が提唱した「ダンバー数」とともに、その名が広く知られている研究者である。ダンバー数とは、ヒトが安定的に社会的関係を築ける人数のことであり、具体的には約150と見積もられている。ダンバーは、霊長類各種の脳の大きさ(とくに新皮質の大きさ)と集団サイズの間に相関関係があることを見てとり、ヒトの平均的な集団サイズとしてその数をはじき出したのであった。 さて、そんなダンバーが書で新たな課題として取り組むのが、「宗教の起源」である。人類史において、宗教はどのようにして生まれ、どのように拡大を遂げていったのか。宗教に関する広範な知識に加えて、専門の人類学や心理学の知見も駆使しながら、ダンバーはその大きな謎に迫っていく。 ダンバーも言及しているように、現生人類の歴史のなかで、宗教は個人や社会に対していくつかの利益をもたらしてきたと考えられる。その代表的なものを5つ挙げるとすれば、(

    『宗教の起源──私たちにはなぜ〈神〉が必要だったのか』 ダンバー数、エンドルフィン、共同体の結束 - HONZ
  • 『コード・ブレーカー』生命科学の最前線を描く話題作 - HONZ

    ぼちぼち年末だというのに、年内に読み切れるのか途方に暮れるくらい注目のノンフィクションが目白押しである。その中でひとつだけ選べと言われたらこのを推す。書はなにをおいても読むべき傑作だ。 なにしろ当代随一のノンフィクション作家、ウォルター・アイザックソンの最新作である。アイザックソンはこれまで、スティーブ・ジョブズやレオナルド・ダ・ヴィンチ、アルベルト・アインシュタインなど、世界を変える革新的な仕事をした人物を描いてきた。彼が今回主人公に選んだのは、DNAを書き換える技術を開発し、ノーベル化学賞を受賞した女性科学者、ジェニファー・ダウドナである。 多様な読み方ができることは傑作の条件のひとつだ。書もさまざまなテーマを扱っている。メインは、生命科学の分野で現在も進行中の熱い革命である。論文の掲載や特許をめぐる激しい競争、成功と名声への渇望、ライバルへの攻撃、仲間との友情といった、キー・プ

    『コード・ブレーカー』生命科学の最前線を描く話題作 - HONZ
  • ジューディア・パール『因果推論の科学』を読む:統計を、AIを、そして科学について考える人は、ぜひ一読を! - HONZ

    ジューディア・パール『因果推論の科学』を読む:統計を、AIを、そして科学について考える人は、ぜひ一読を! 英語圏ではすでにして評価の高い、ジューディア・パールの大著『因果推論の科学--「なぜ?」の問いにどう答えるか』(原題はThe Book of Why)が、ついに翻訳刊行された。実は私は原書を読みかけて挫折していたのだが、このたび邦訳が出たのを機に、ついに読み通すことができた。そして、書を読み通したことで得たものは大きい。 ジューディア・パールは、人工知能への確率論的アプローチの導入と、ベイジアンネットワークの開発により世界的名声を確立し、「人工知能分野の巨人」とも呼ばれる人物である。ベイジアンネットワークなんて初めて聞くという人もいるかもしれない。人口知能研究の歴史という観点からざっくりその位置づけを説明すると、かつてAI研究は、「エキスパートシステム」と呼ばれるアプローチを採ってい

    ジューディア・パール『因果推論の科学』を読む:統計を、AIを、そして科学について考える人は、ぜひ一読を! - HONZ
  • 『語学の天才まで1億光年』超絶面白い語学本! - HONZ

    表紙をみて思わず笑ってしまった。1光年は、光の速さで1年かかる距離だ。1億光年は1億年である。にもかかわらず表紙に描かれた人物は、遥か彼方の目的地にのんきにカヌーで向かおうとしている。 だが笑った後で、はたと気づいた。言語の習得というのは、まさしくカヌーを漕ぐような行為なのではないか。前に進むかどうかは自分次第。しかも目標に到達するまで気の遠くなるような時間がかかる。そう考えると、いたく説得力のある表紙にも見えてくる。 書は、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをし、誰も書かないを書く」ことをポリシーに、「辺境ノンフィクション」という独自のジャンルを切り拓いてきた著者による語学体験記である。同時に極めて実用的な言語学習の参考書でもある。語学をめぐる面白すぎるエピソードと、現場でとことん使える実用的知識との融合。あまりにユニーク過ぎてちょっと類書が思い浮かばない。唯一無二の語学

    『語学の天才まで1億光年』超絶面白い語学本! - HONZ
  • 認知科学の観点から考えた最適の英語学習法──『英語独習法』 - HONZ

    この『英語独習法』は、認知科学や発達心理学を専門とする今井むつみによる、認知科学の観点から考えた最強の英語学習について書かれた一冊である。『「わかりやすく教えれば、教えた内容が学び手の脳に移植されて定着する」という考えは幻想であることは認知心理学の常識なのである。』といったり、多読がそこまで良くはない理由を解説したり、一般的に良しとされる学習法から離れたやり方を語っている。 特徴としては、「何が合理的な学習方法なのか」を披露するだけではなく、「なぜそれが合理的なのか」という根拠を説明しているところにある。だから、これを読んだらなぜ一般的な英単語の学習法(たとえば、英単語と日語の意味を両方セットで暗記していく)が成果を上げないのか、その理屈がわかるはずだ。認知科学のバックボーンから出てくる独習法も納得のいくものばかりである。僕も様々な理由(英語圏Vなどの英語が聞き取れるようになりたい、洋書

    認知科学の観点から考えた最適の英語学習法──『英語独習法』 - HONZ
  • 『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 - HONZ

    「意志の強さは成功するかどうかと無関係」と喝破するビジネス書が現れた。確かに仕事がうまくゆかないとき、「自分の意志が弱いから」と落ち込む人は少なくない。「意志力の不足」が一番の原因と考える経営者も多い。 しかし、気合いを入れても集中力が続かないことはよくある(恥ずかしながら私自身、しょっちゅうそうだ)。書はそうした悩みを持つ人に一筋の光をもたらす優れた自己啓発書である。 書の原題は『Willpower Doesn’t Work』(「意志力など役に立たない」)である。著者は米国の組織心理学者で、成功するために「意思の力」を用いるのは大間違いだと説く。意思に頼っても過去の自分からは脱却できないからだ。 その反対に著者は、自己の内部ではなく外部の環境を変えることで、無理なく状況を変化させるテクニックを指南する。表紙裏のページには「環境を作りコントロールしないと、環境に作られコントロールされて

    『FULL POWER 科学が証明した自分を変える最強戦略』 - HONZ
  • 『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス いまからおよそ1万年前、人類は農業を発明した。農業が生まれると、人びとは必要な栄養を効率的に摂取できるようになり、移動性の狩猟採集生活から脱して、好適地に定住するようになった。そして、一部の集住地域では文明が興り、さらには、生産物の余剰を背景にして国家が形成された──。おそらくあなたもそんなストーリーを耳にし、学んだことがあるだろう。 しかし、かくも行き渡っているそのストーリーに対して、書は疑問符を突きつける。なるほど、初期の国家はいずれも農業を基盤とするものであった。だが、人類はなにも農業を手にしたから定住を始めたわけではない(後述)。また、メソポタミアで最初期の国家が誕生したのは、作物栽培と定住の開始から4000年以上も後のことである。それゆえ、「農業→定住→国家」と安直に結び

    『反穀物の人類史──国家誕生のディープヒストリー』 農業の優越性という神話、国家の形成をめぐるパラドックス - HONZ
  • 『人喰い ロックフェラー失踪事件』マイケルはなぜ喰われたのか? - HONZ

    最初に言っておく。このは「閲覧注意」である。タイトルそのまま、当にそのままなのだ。 1961年11月20日、マイケル・ロックフェラーはニューギニア南部で消息を絶った。 この地を訪れていた23歳の若者の父親は、ニューヨーク知事で後に副大統領となるのネルソン・ロックフェラー。地球で一番の金持ちで、スタンダード・オイルの創設者ジョン・D・ロックフェラーの孫だ。父親がマンハッタンの五番街そばに開館した「プリミティブ・アート博物館」に展示するコレクションの収集のため、未開の地の美術品を買い付けに来ていたさなかのことだった。 マイケルに同行していたオランダ人人類学者のルネと目的地へボートで移動中、エンジンが故障し漂流した。案内人の現地人が泳いで助けを求めに行った後、しびれを切らしたマイケルは白いブリーフ姿になり、空のガソリン缶を浮き輪替わりに、かすかに見える陸地へ泳ぎだした。水泳には自信があったし

    『人喰い ロックフェラー失踪事件』マイケルはなぜ喰われたのか? - HONZ
  • 『ホット・ゾーン』エボラ克服には、地球規模の強大な努力が不可欠だ - HONZ

    西アフリカで猛威を奮うエボラ出血熱はアメリカ土での感染者も現れ、一層の拡大が憂慮されている。書『ホット・ゾーン』は1994年に刊行。いつか迫り来るであろう遠方の脅威としてではなく、まるで肉声が聞こえてくるかのようなナラティブな手法でエボラの獰猛さを最前線から伝えた。 そして2014年、過去最大のアウトブレークを迎え、新装版の刊行が急遽決定する。著者・リチャード・プレストンは今、何を思うのか? 新装版に向けて書いた追記を、HONZにて特別先行公開いたします。(※現段階で単行未収録) この文章を書いているあいだも、エボラ・ウイルスは西アフリカの人々のあいだで猛威を振るっている。2014年のエボラ・アウトブレークは、エイズを発症させるHIVウイルスが1980年代初期に地球的規模で出現して以来、新興感染症としては最も爆発的な最悪のアウトブレークとなった。 エボラ・ウイルスが最初に確認されたの

    『ホット・ゾーン』エボラ克服には、地球規模の強大な努力が不可欠だ - HONZ
  • 『わたしは不思議の環』 あるいはゲーデルの渦、シンボルのダンス、自己増強する錯覚 - HONZ

    わたしたちが最もよく知っているものでありながら、それが結局何なのかはまるでわからないもの──そう、それが「私」である。「私」とはいったい何であるのか。また、わたしの脳からどうやって「私」が生じてくるのか。書は、その難問に認知科学者のダグラス・ホフスタッターが挑んだものである。 ホフスタッターといえば、その前著『ゲーデル、エッシャー、バッハ』があまりにも有名だろう。彼がおよそ40年前に上梓したその処女作は、巧みな比喩とアナロジーで多くの人の知的好奇心を刺激し、世界に広く知られるベストセラーとなった。今回の著書でも比喩やアナロジーの巧みさは健在で、その内容も読者の想像力を大いに刺激するものとなっている。 では、「私」とは何であるというのか。それに対するホフスタッターの答えは、書のタイトル(原題:I Am a Strange Loop)においてすでに表明されている。すなわち、「私」とは「奇妙

    『わたしは不思議の環』 あるいはゲーデルの渦、シンボルのダンス、自己増強する錯覚 - HONZ
  • 『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』 - HONZ

    私は、1年のうち少なくとも3ヶ月は、海外で恐竜化石調査を行っている。主な調査地は、モンゴル・アラスカ・カナダ・中国、そして日である。2017年4月には、北海道むかわ町穂別から発見された日で最初の大型恐竜の全身骨格について、発表をした。全長8メートルのハドロサウルス科という恐竜で、全身の8割以上が揃っている、世紀の大発見だ。私の研究は、それだけではない。恐竜から鳥類への進化の過程についても研究をしている。爬虫類的な恐竜から、鳥型の恐竜へと進化していくそのプロセスに注目しているのだ。脳の進化、消化器官の進化、翼の進化など、「恐竜の鳥化」というものをキャリアのテーマとしている。私だけではなく、世界中の恐竜研究者の成果によって、最近では「鳥は恐竜である」ということが定着してきた。つまり、世界中の鳥類研究者は、“恐竜研究者”ということになる。 * 最初に『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』が出版され

    『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』 - HONZ
  • 『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ

    もはや毎日のように顔を合わせている人たちについての話だ。地域によって差はあるものの、都市部のコンビニでは外国人スタッフの存在はすっかり当たり前になった。自宅の最寄りのコンビニともなると7割くらいが外国人店員という印象なのだが、その割に知っていることはあまりにも少ない。タイトルを見た瞬間、自然と手が伸びた。 中身はコンビニの話にとどまらない。コンビニ店員のほとんどを占める私費留学生を中心としながらも、技能実習生、その他の奨学生、さらには在留外国人全般にわたる幅広い視野で外国人労働者の置かれる状況がまとめられた1冊である。 近い将来変わる見込みがあるものの、現状は技能実習生がコンビニでバイトをすることは認められていない。コンビニで働く人外国人のほとんどは、日語学校や大学で学びながら原則「週28時間」の範囲で労働する、私費留学生だ。中国韓国・ベトナム・ネパール・スリランカ・ウズベキスタンなど

    『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない - HONZ
  • 今の日本を知るならこれ!『フランス文学は役に立つ!』 - HONZ

    別世界、別次元を楽しむための小説の一節に不意にドキッとさせられることがある。「これ今、私の目の前で起こっていることじゃん!?」「あの生意気小僧、この主人公にそっくりだな。」「あのおばさんも確かにこんな感じだった。」「これ今の日の状況と同じだな。」 フランス文学の面白いところは100年以上前に他国で書かれたものなのに、現在の日を正確に捉えていて、現実世界とシンクロしながら、私の悩み相談の解決策を掲示してくれるほどリアルなところだ。 書の著者、鹿島茂は、好きなら誰もが知るフランス文学者であり、フランス文学や俗世に関して100冊以上を世に送り出している。私は、『馬車が買いたい』『とは知らなんだ』などは大好きで、『パリ、娼婦の街』や『モンマルトル風俗辞典』を読んでやたらとフランスの娼婦文化について詳しくなったり、『鹿島茂 大読書日記』で新刊から足が遠のいてしまい、戻ってくるのに必死だった

    今の日本を知るならこれ!『フランス文学は役に立つ!』 - HONZ
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