『痴人の愛』(谷崎潤一郎/新潮文庫 発表年 1925年) 二十八歳の河合譲治は、西洋人じみた美貌のカフェーの女給ナオミを見初める。その時ナオミは数えの十五歳。譲治は、てもとに置いて成長を見届け、気に入ったら妻にしようという目論見だ。少女の発育を見ながら遊びのような気分で一軒の家に住まうなんてきっと楽しいにちがいない……。最初のうちこそふたりの生活は譲治の期待通りに過ぎていくが、成熟するにつれ、ナオミの魅力は妖しく、奔放に開花。まわりの男を惑わし、譲治のこころをかき乱し、生活のすべてがナオミという嵐に翻弄されていく……。