NFTは「デジタルデータの価値を担保し、真正性を高める技術」であり、「情報の改竄が困難な真贋証明書」と言われる。その土台となるブロックチェーン技術の登場以降、インターネット上に無数に存在し、半ば公共財として無限に複製できた画像や音楽や映像が突如、唯一無二の希少価値を持つものとして高額で売買され、私有財産として所有されるようになった。仮想空間上のアバター、SNSのプロフィール、アニメ化、ゲーム化など将来の実用性を見込んださまざまなNFTアートが無数に登場し、人々を投機へと駆り立てたが、アーティストたちは、NFTの本質を眼差し、その実用性を奪い、機能を転倒させ、従来の意味を拡張する方法を発明してきた。本章では、その中でもNFTによって生まれた新たな「所有」の形に介入することで独自の表現を探究する作家たちに焦点を当てる。所有者以外にもあらゆる人に所有権を与えて作品を「万有」させるレア・メイヤーズ