水泳の池江璃花子選手が「努力は必ず報われる」と発言したことが、一時話題になりました。「努力すれば成功する」という考え方は、裏を返せば(対偶を取れば)「成功しない者は努力が足りない」とも解釈できるからです。池江さんの発言は、そのような一般的な命題ではなく、「努力してよかった」という主観的な感じ方を述べたのに過ぎないのでしょう(為末大さんのブログ「努力は報われるのか」[1] 参照)。ただし、「努力すれば成功する」という考え方には最近のポピュリズムにつながる、社会的に重大な問題が潜んでいそうです。 「白熱教室」で知られるハーバード大学のマイケル・サンデル教授の最新刊「実力も運のうち 能力主義は正義か?」[2] はこの問題に正面から切り込んだ1冊です。この本は「メリトクラシー」の功罪を論じたものです。メリトクラシーとは、より高い業績をあげた者により高い報酬を与える、という考え方で、日本語では「能力