千利休の高弟で、桃山時代の茶の湯をリードした大名茶人、古田織部(おりべ)を主人公にした漫画がある。山田芳裕さん(38)の『へうげもの』(講談社「モーニング」隔週連載)。茶の湯の漫画というのも珍しいが、武勲を挙げるか、数寄(すき)の世界に生きるか迷う姿を破天荒な想像力で描いて、めっぽう面白い。(前田恭二) 大リーグで日本人選手が活躍する前作『ジャイアント』(モーニングKC、計9巻)を執筆中、茶の湯に興味を持ったという。「日本人選手はよくサムライと呼ばれる。しかし『葉隠(はがくれ)』にしても偏執的に感じるし、今のおれらが目指すには違和感がある。日本人がどういうものか突き詰めて考えた時、もう一つ、茶の湯があるだろう、と」。千利休の資料を調べ始め、そこで織部に出合った。 物語は30代から始まる。武士でありながら、主君・織田信長の所持する香木・蘭奢待(らんじゃたい)や南蛮服に陶然とし、茶釜・平蜘蛛(