3.11後、いち早く原発事故後の福島を題材にし、各方面で話題となった表題作「なのはな」を含む萩尾望都の最新作品集『なのはな』が3月7日に発売された。表題作の他、「プルート夫人」、「雨の夜-ウラノス伯爵-」、「サロメ20××」、「なのはな」の後日談を描いた描き下ろし「なのはな ―幻想『銀河鉄道の夜』」が収録されている。いずれも、3.11以降でなければ、描かれなかったはずの作品だ。 原発事故により、突然、住み慣れた土地を汚されてしまった人々の行き場のない悲しみや怒りが癒されることはあるのだろうか。「なのはな」では、原発事故後に一変し、異常な状態が日常となった生活が淡々と描かれている。物語の鍵となるのは菜の花。主人公のナホは、チェルノブイリでは、土壌の汚染を除去するために植物が植えられているのだと知る。 ナホはチェルノブイリに住む少女の夢を繰り返し見る。言葉のわからない彼女との夢の中での交流を描