今朝、目覚めたら、なんだか蔵王の麓の夏休みのような空気がして気分がよく、そのまままどろんでいたのだが、煙猫が空を切る怪しげな踊りを始めたので仕方ないなと体を起こした。よく見れば煙猫の視線の先にはブンブンと飛ぶ一センチくらいの大きな蝿が一匹。ああ、夏の空気を作っていたのはこいつの羽音だなと納得し、しばらく煙猫の大捕物帳を眺めていた。 それから、かかせない休日の仕事は洗濯ですよと重い腰をあげて洗濯機を回し、屋上で脱水の終わったシャツを干していた時にふと母を思い出した。私が洗濯物を干すときまって「あなたが干すといつもこう、だらしない。」と眉間にしわを寄せて言うのだった。もちろん今日も、洗濯機から出して一度パンッてふっただけで襟元もなにも気にしないでハンガーにかけていたのだが、どこかで母が見ているような気がして落ち着かなくなり、今日ばかりは文句のつけようのないくらい丁寧にシャツのしわをのばした。
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