ドイツ、フランス、ベルギーに囲まれたルクセンブルク大公国は、実に美しい国である。特に、首都から少し離れた谷間の街、ヴィアンデンは独特の雰囲気が漂い、丘の上にそびえ立つ古城を眺めながら飲むコーヒーは格別な味がする。 筆者は疲労困憊状況に陥ると、ただそれだけのためにこの街を訪れることがある。むろん、ベルギーからルクセンブルクに入国する際、パスポートコントロールはない。この国の小さな街であるシェンゲンで1985年に結ばれたシェンゲン協定に、双方の国とも加盟しているからだ。 この国の歴史を振り返ってみると、変身の連続であることが分かる。蝶は、幼虫から蛹、成虫と2回の大変身を経て一生を終えるが、この国の場合、成長してからも、既に2回も大変身を遂げ、輝き続けている。 EU(欧州連合)の前身の欧州鉄鋼石炭共同体(本部:ルクセンブルク)のメンバーだったルクセンブルクは、その情報力や地の利を利用して、196