「学校を出たら、農業をやるんです。だからもうこんなふうに、自由に海外を旅する機会は、あまりなくなるんじゃないかと思います」 と、大学院の退院*1を前にして、とある先輩が言った。それに対して先生*2は、 「自由に海外を旅する機会がない? そんなこと、嘆く必要なんかまったくない。だって君は農業をやるんだから。毎日畑に出て土に触ることは、旅以外の何者でもないでしょう。こんな豊かな生き方は他にない」 と、言っていた。 当時私は23歳で、「先生が、なんかスゲエことを言っているぞ……!」ということだけはひしひしと理解したのだけど、正直、なぜ毎日畑に出て土に触ることが旅と同じになるのかよくわからなかったし、今でもあまりわかっていない。 ただし、20代の後半くらいになって気が付いたこととして。人生を豊かにしてくれるのはきっと、「答え」ではなく、「問い」と「謎」を与えてくれる人との出会いだ。私はいまだに、あ