学校が嫌いだった。 勉強も、習い事も、何も、人並みにできなかった。 でも将棋という初めて人並みにできることが見つかった。 自分は将棋がなかったら、鈴木大介先生に出会わなかったら、どうなっていたかわからなかった。 “軍曹”、“ストイック”――。永瀬拓矢を形容するいくつもの強固な異名。今春、“3度目の正直”で初タイトル獲得に燃える男のイメージとは、あまりにもかけ離れた言葉の数々に、思わずたじろいだ。 少年期を支えた磯子将棋センター席主・加山雅昭、棋士として生きる道を与えた鈴木大介、そして自らの立ち位置と現実を突きつけた天才・佐々木勇気。 いずれも、現在の永瀬の運命を変えた重要人物と言えるだろう。 永瀬を支えた言葉、そして彼が描く感謝と恩返しとは―? 「負けそうで、泣きそうで、消えてしまいそうな僕は 誰の言葉を信じ歩けばいいの?」(『手紙 〜拝啓 十五の君へ〜』 作詞・作曲/アンジェラ・アキ)