はじめに 世界的な経営学者、P・ドラッカーは、2005年11月に亡くなられた。彼は、95年に及ぶ生涯の中で、実に多くの著述を残した。その代表的なものとして、「経営者の条件」、「断絶の時代」、「マネジメント」、そしてここで取り上げる「ネクストソサエティ」がある。これらの著作は、どれも多くの示唆に富んでおり、彼は、「近代経営学の父」と呼ばれたのである。 そのドラッカーは、「ネクストソサエティ」(上田惇生訳、ダイヤモンド社)の中で、今の日本問題を鋭く指摘している。この本の「日本の読者へ」の中で、「日本では誰もが経済の話をする。だが、日本にとっての最大の問題は社会のほうである」、と喝破している。その日本の社会制度や国家政策や社会慣行は、戦後長らく有効に機能していたが、現在は、そのどれも機能不全に陥り、その改革が急務であると指摘しているのである。 人が作ったものは、建物や生産設備などのハードウエアで