詫間です. 学生に科学技術史を教えておりますが,どうしても分からないことがありましたので,みなさまに助けを乞いたいと思います. ヴィクター・カッツの『数学の歴史』(邦訳)(共立出版,2006年)には, 中世イスラムで用いられた代数方程式のうち,実際の社会的場面(測量,遺産相続,商取引き,経理,行政など)で用いられたもののほとんどは1次方程式で,2次方程式の事例はわずかであると述べられています. フワーリズミの教科書などに出てくる2次方程式の例題の多くは,数学的能力を養うための人工的な練習問題であり,実用例ではないとのことです.(この辺の事情は,古代バビロニアの書記官の訓練に用いられた2次方程式の例題と同様だと,カッツは言っています.) しかし,逆に言うと,実際の社会的場面で使われた2次方程式の実例が,少数だがあるわけです.ところが,カッツの『数学の歴史』にはその具体例が載っていません. ど