子どもの手をとり、行き交う車と距離を取る。 横断歩道の前で、信号が切り替わるのを待つ。 「…おとうちゃん」 私の娘は最近になって車を怖がるようになってきた。 不安そうな顔で見上げてくるので、つないでいる手を大きく上下に揺らしてみると少し表情が和らいだ。 目の前を忙しく横切る視界の向こう側。まだ赤信号だ。 不意に昔の記憶がよみがえってきた。 あれはまだ私が幼かった頃のことだ。 ー ー ー ー 20年くらい昔のことだ。 全国の通学路で危険視されていた交差点を中心に、新型の飛び出し君が順次設置されていった。 飛び出し君といえば、それまでは黄色い帽子をかぶった子どもや人気キャラクターに似せた形の板が道路脇に立てられ、ドライバーへの注意を促す役割を果たしていた。 その進化版として登場したものが、この新型の飛び出し君だった。 試みが実施された当時は、その物珍しさゆえに大きな話題となった。 仕組みとして