俺は村に戻るなり、当時の村長に正直に話をした。 連れ去られた娘たちを敵対する民族の村から連れ出す際、数人の男達に見つかり囲まれた。 これまで多くのケンカをしたが、加減は弁えていた。 でも、その時の俺は見境なく、その男達を殺めてしまった。 相手が本気で闘う姿勢を見せようが見せまいが、そんなことは関係なかった。 どこかでずっとそういうことを思い描いていたのだろうか。 人を殺める術が頭に浮かぶのを何となしに眺めているうちに、その囲いは解かれた。 娘たちを先に逃し、それからは追ってくる者たちをその都度殺めた。 …人殺しは重罪だと昔誰かに教えてもらった。 でも、それがなんで罪になるのかという答えを明確にしてくれた人は、俺の傍にはいなかった。 「村へ戻らずに、どこかへ行こうとは思わなかったのか」 当時の村長は俺にそう聞いた。 何も答えない俺に対して、村長が次に告げた言葉の意味がよくわからなかった。 私