プロ野球の臨時コーチとして、ほかのスポーツのコーチを招くことがたまにある。これはほかの競技における優れた学びや指導を、野球の指導にも生かそうということである。 似たことは、スポーツの世界に限らず、いろいろあってよいだろう。棋聖戦に勝利してまもなく、将棋の藤井聡太二冠は次のようにコメントしている。 「今は対決の時代を超えて、人間とAI(人工知能)は共存という時代に入ったのかなと思います」 この「共存」という言葉こそ重要だ。また、テレビ画面でもわかるように、棋士の方々の「考え抜く」姿勢こそ見習うべき姿である。 本稿では、藤井二冠の目覚ましい活躍によって注目されている将棋の世界で語られる教訓などを参考にして、来るAI時代を視野に入れた数学の学びと指導を考えてみたい。 人間とAIの共存は十分可能 筆者は大学教員として42年間勤務し(専任、非常勤ともに5つの大学)、大学生約1万5000人に対する授業