一般に使われている「利己的な遺伝子」は、「生物の様々な性質は、遺伝子が自らのコピーを残すのに都合が良いように進化させた結果である」ということを分かり易く表現したものだ。これは、リチャード・ドーキンスが『利己的な遺伝子』という一般向けの本で示した一つの見方である。しかし、進化学では、ドーキンス流の「利己的遺伝子」とは少し意味の異なる「利己的遺伝因子」の意味で使われることが多い。ドーキンス流の「利己的遺伝子」の見方がなぜ進化のプロセスを考える上で、誤解を招きやすいかを解説する。 本記事を修正・加筆した記事が、以下の新書の第3章に収録されています。 「利己的遺伝子」とは「恋をするのも、争うのもすべては遺伝子の思惑通り?」これは2022年科学道100冊に選ばれたリチャード・ドーキンス「利己的な遺伝子」(1)の紹介のタイトルである。このような表現は、生物のあらゆる性質は遺伝子にとって有利に進化した結
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