女性を家事や育児等の家庭内労働から解放しようという運動は長い歴史をもつが、現実にそれを達成した社会はイスラエルのキブツを除いてまずないだろう。キブツは性、年齢、出身社会の差を超えて完全な平等社会の実現をめざしたもので、男女の差は出産を除いてあらゆる面で撤廃されている。しかし、血縁関係のない“大家族”といわれるキブツも、ここ10年ほどの一般社会の変化の波に洗われ、徐々に個人主義の顔をもつ共同体に変わりつつあるという。今回は、イスラエル大使館のヤコブ・ケイダールさんと竹内新子さんにキブツの暮らしについてお聞きした。 家族は普通は4人か5人。子どもが3人いる家庭は珍しくなってきました。普段の生活は核家族ですが、週に1度、たいていは金曜日の晩に親戚中が集まって食事をします。過越しの祭りや新年には海外からも大勢の親類が来ます。ヨーロッパのユダヤ人は小家族ですが、アジアのユダヤ人はみな大家族で押し寄せ