冒頭、55歳の著者が自分の人生を振り返り、「からっぽだった」と総括する。自分の人生は失敗だった、これから一発逆転もないだろう、と。暗いのだ。全編、低温の叙述が続く。だが、なぜか飽きずに読み進み、不思議な読後感が残る。これはいったい何だろう? 本書は有名ブロガーが、ペンネームで自らの半生をつづった随想録だ。失恋し、大学院を中退し、離人症となり、職を転々としてフリーのテクニカルライターに。世間的に評価されることを成功と呼ぶのなら、著者だけでなく世の人間のほとんどは、失敗の人生を送ることになる。実際、中年以降に自らの人生を失敗と見るあり方は、むしろ普通なのではないか。 しかし、とるに足らない人生を自分なりに了解していくためには……「考えていくだけでいい」と著者は言う。「誰かの成功法則を自分で実験するよりも、自分で考えて自分だけの人生を発見していくほうが、結局、納得できる人生になる」 だから著者は