文藝評論家・日本平和学研究所理事長 小川榮太郞氏(上) わが国の急激な少子化、人口減少をどう見るか。 戦後、世界でも類を見ないほど極端な個人主義を、マスコミ、日教組教育、日本のアカデミズムが推進した。このイデオロギーとしての個人主義が日本の伝統的な家族のあり方を否定し、少子化にも大きく響いている。少子高齢化は「先進国病」の一つと言われるが、新しく出てきた「自由」や「個人」というものが、むしろヨーロッパやアメリカにおけるそれ以上に絶対化された。 欧米の場合、保守の基盤にキリスト教があり、新しい思想が出てきても、いくらでもカウンターでけんかができる。ところが日本の場合、そういった対抗軸がほとんどなく、長年、保守的な地盤だった思想が、戦後、一切合財、否定されてしまった。その結果、少子化現象もそうだが、日本社会は、政治で救えないほど、根底的な衰弱が進行して、今いろいろな問題が出てきている。