関東大震災の復興住宅として建てられた同潤会アパートのうち、唯一現存する東京都台東区の「上野下(うえのした)アパート」が6月初めに解体され、84年の歴史に幕を閉じる。 当時としては最新の設備を備えた日本のアパートの草分け的存在だったが、老朽化には勝てず、今月初めまでに退去した住人らは、家族のように肩を寄せ合って暮らした「我が家」との別れを惜しんでいる。 上野下アパートは1929年(昭和4年)に完成した4階建ての2棟。4階部分が外側に張りだした姿が特徴で、計71戸の住居部分には2Kとワンルームタイプがあった。2Kには当時まだ珍しかった和式の水洗トイレや台所の流し台、ごみを1階の集積場に直接捨てられるダストシュートが完備されていた。