晶文社版を読んだばかりなので増補部分を中心に読む。 トリックよりロジック重視という著者の主張は、本書に関係なく、有栖川有栖の作家アリスシリーズを読むうちに自分も思い至っていた。鬼面 人を威すトリックは不要で、綿密に組み立てられた犯罪計画のわずかな疎漏を、探偵がロジカルに解き明かしてゆけば、読み応えのあるミステリが成立する。 法月綸太郎による解説の「トリック小説の不自然さを自覚したきっかけが、少年向けの挑戦状ミステリ『蜃気楼博士』だった」。そんなくだりがあったっけ? 気になって最初から跳ばし読み、ようやく見つける。「そもそもは、三年ばかり前、中学生向けの雑誌に、推理小説を連載したことに原因しているのです」。ここだ。 都筑道夫のジュブナイルといえば『妖怪紳士』が後で考えればクートゥルー神話だったり、子ども相手でも手を抜いていない。『蜃気楼博士』も面白いのだろう。