無機化合物の多様性と材料探索¶ 材料科学で取り扱う元素の種類は80程度であるが,その組み合わせは2元系で約3千,3元系になると約8万となる.しかし可能な化合物の数は,組成比を考慮すると大きく増える.化合物AxByCzでx, y, zを整数として,x + y + z = 10と限定しても,その組み合わせは100とおりであり,3元系全体では800万とおりになる.同じ組成であっても結晶多系と呼ばれる様々な構造を持つ場合が多いので,その数はさらに増える.一方で,世界最大の無機結晶構造データベース(Inorganic Crystal Structure Database: ICSD)に収録されている3元系までの無機化合物データは現在76000件であり,同一の化合物で複数のデータが収録されている重複を除けば,実験的に結晶構造が既知の無機化合物の数は5万件を下回る.このうち生成エネルギーなどの熱力学デー