モバイル機器,特に携帯電話の未来に大きな影響を与えそうな技術が,実用化に近付いている。それが「拡張現実」(AR=augmented reality)。現実世界の映像にデジタル情報を重ね合わせて,利用者の活動を支援するユーザー・インタフェースの技術である。 その適用範囲は幅広い。ARの研究開発を専門とするアスカラボの角田哲也社長は「広告やゲームなど,多様な応用例があり得る」と説明する(図1)。 例えば,旅行先でビルや道路に携帯電話のカメラをかざすと,その名称や住所がオーバーレイされた状態でディスプレイに表示される,遺跡でヘッド・マウンテッド・ディスプレイ(HMD)を装着すると,かつてそこにあった建築物が3次元コンピュータ・グラフィックス(3次元CG)で再現される──といった具合である。 ARの研究は1990年代の初頭に始まった。かつては大掛かりなハードウエアを必要としたが,CPUの高性能化,