◆漫画家 手塚治虫さん(1989年死去、享年60) ◇科学の子の哀しみ 「欲望の結末」問い続け 「アトムが住んでいた」という街に出かけた。都電に揺られて。 池袋の隣町なのに、時が止まったようなたたずまいが残る東京都豊島区雑司が谷の鬼子母神前。セミの声が降るケヤキ並木から入った路地に、手塚治虫さんが1950年代に暮らした2階建てアパートがある。 55年の雑誌「少年」新年号の付録「鉄腕アトム」表紙裏には、アトムから読者への手紙という体裁で、こんな一文がある。 <いま、ぼくは東京の雑司ケ谷に、一年あとで生まれた、ロボットのおとうさんとおかあさんといっしょにすんでいます> このアパート2階の一室から、他にも「火の鳥」などの名編が生まれた。現在の大家さん、砂金(いさご)宏和さん(58)は「記念写真を撮っていかれる手塚ファンの方が今もいらっしゃいます」と話す。祖父が建てたこの「並木ハウス」、間取りや外