・日本の女が好きである。 『美人論』の井上章一による美人とそうでない人の研究。 著者は、外国人に日本の政治や社会を批判されても反感がおこらないが、日本の女はぶさいくだと言われれば立腹してしまう自分に気がついたという。「日本の政治や社会は、すこし愛していない。ああ、おれが心から愛しているのは、日本の女だったのか」。美人をめぐる社会学の論考集である。 著者は相変わらず美人の変遷を追いかけている。ここでは古墳時代から中世まで遡って考えたとき「高松塚美人も樹下美人も、みな下ぶくれにえがかれている。源氏物語絵巻も、その点はかわらない。みな、おむすび顔になっている。だが、どうだろう。あんな顔面をもった人間は、ほんとうにいたのだろうか。」と問題提起する。 そして絵画類から美人史を復元する試みは、「セーラームーン」の絵を見て20世紀には顔の二割を占めるような大きい目が美人の条件だったとするのと同じだと指摘