Netflixで、プロレスに関する映像作品が立て続けに2本配信された。ダンプ松本と長与千種の髪切りマッチを軸に、1980年代半ばの全日本女子プロレスの様相を描いていくドラマ『極悪女王』と、世界的プロレス団体WWEを築き上げたビンス・マクマホンの半生に迫ったドキュメンタリー『Mr. マクマホン: 悪のオーナー』だ。 1985年という時代における少女たちの状況と熱狂を描いた日本のドラマと、およそ50年に及ぶ世界最大のスポーツエンターテイメント団体の歴史。偶然にも同時期に配信が開始されたこの2つの作品は、並べて見ることでプロレスについての立体的な視座を私たちにもたらす。 そして、そこで得られた理解――虚構と現実を混濁させるプロレスの危険性を鑑みると、40年前の女子プロレスを描いた『極悪女王』の描写のある種の無邪気さに、少なからぬ危うさを感じざるをえない。実在の団体の実名の選手をドラマ内にそのまま