君は今、ベッドで横になりながらこれを読んでいるな。しかも寝起きとかちょっと横になったとかではなく、6時間とか、下手したら12時間以上、浅い眠りと覚醒を繰り返して、夜も昼も区別のないカーテンの締め切った部屋で、ろくな食事もしないままいるのだろう。喉が渇けばベッド脇に置いたペットボトルの水を飲み、トイレには這って行く。ろくな栄養を取れていないから立ち上がったままで2分と居れず、すぐさまベッドに倒れこむことも珍しくなく、時々出るものもないのに吐く。意味もなく泣く。頭は動かない。 僕はそんな生活をしていた事がある。体重は落ち、頰はこけて、髪は白くなった。けれど、自分が自殺できる人間でないことは分かっていたから、生存する努力をしなければならなかった。 喉が渇いたら無理にでも起き上がって、箱買いしたウイダーを取りに行き、そのままベッドへ戻る。呼吸を整えたら、横になったままウイダーを口に流し込む。一口を
去年9月7日の早朝。福岡市の九州大学で火災が発生した。現場は、大学院生が使う研究棟。所狭しと研究室が並ぶ「院生長屋」と呼ばれる場所だった。キャンパスの移転で、取り壊しが始まるやさきに事件は起きた。焼け跡から遺体で見つかったのが、K、46歳。九州大学の博士課程まで進み、9年前に退学した男で、誰もいなくなった研究室に放火し、自殺したと見られている。九州大学は、Kが利用資格を失った後も、無断で研究室を使っていたと説明した。 ともすれば、この事件は注目を浴びることもなく、忘れ去られていたかもしれない。しかし事件後、その死をめぐり思わぬ波紋が広がった。ネット上に、「あすはわが身」など、Kにみずからの境遇を重ね合わせる研究者たちの悲痛な叫びがあふれたのだ。Kの死が投げかけたものはなんだったのか。私たちはその人生をたどることにした。(報道局社会番組部ディレクター 森田徹/福岡放送局ディレクター 水嶋大悟
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