◇「計算に1時間」 東京電力福島第1原発事故に関する国会の事故調査委員会(委員長、黒川清・元日本学術会議会長)は15日、東京都内で第4回委員会を開いた。会合には原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長と経済産業省原子力安全・保安院の寺坂信昭前院長が出席。班目氏はSPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)に関し、「計算には1時間必要で、風向きが変わる場合がある。SPEEDIが生きていたらうまく避難できていたというのが誤解だ」と述べ、住民避難に生かすのは困難だったとの見解を示した。また、原発に関する国の安全指針について「瑕疵(かし)があった」と陳謝した。 政府のマニュアルでは事故の場合、保安院が緊急時対策支援システム(ERSS)を起動して放射性物質の放出源情報を把握。SPEEDIで放射性物質がどこに拡散するか予測することになっている。しかし、今回の事故では、地震による原発の外部電源喪
20キロはある鉛板を背負いビル6階分の階段を一気に駆け上がる。首からぶら下がる線量計がけたたましく鳴り、白く曇る全面マスクが視界を遮る。気温30度以上。呼吸が乱れる。 「奴隷みたいな扱いが悔しかった」。長崎県の中山洋介さん(40代)=仮名=は昨年7月から約40日間、東京電力福島第1原発で働いた。鉛板は1号機の建屋内に放射線を(遮蔽、しゃ、へい)するために取り付ける。中山さんがその言葉を絞り出したのは、過酷な労働のせいではない。故郷に帰ってからのむごい仕打ちに対してだ。 中山さんによると、仕事を紹介されたF社から受け取った給料は日当1万1000円。約束では1万4000円のはず。そもそも事前の説明では、建屋には入らないと聞いていた。 食い下がる中山さんにF社は福岡県内の指定暴力団の名を挙げ、吐き捨てるように言った。「ヤクザが出てきても知らんばい」。F社が2社を通し労働者を送る2次下請けのC社は
任期満了に伴う京都市長選は5日投開票され、無所属で現職の門川大作氏(61)=民主、自民、公明、みんな、社民京都府連推薦=が、無所属新人で弁護士の中村和雄氏(57)=共産推薦=を破って再選を果たすことが、確実になった。門川氏は山田啓二・京都府知事との「府市協調」をアピール。推薦を受けた5党や経済団体の支援を受けて優位に戦いを進めた。 「大阪都構想」が争点となった昨年11月の大阪ダブル選後はじめての政令市長選だったが、大都市制度をめぐる論争は低調で、地域経済や雇用、財政再建などが争点となった。 門川氏は、職員削減や給与カットによる市の財政健全化や、巨額の赤字を抱える市営地下鉄事業の収支改善などの実績を強調。5党の支持層を手堅くまとめた。 中村氏は脱原発を前面に掲げたが及ばなかった。【古屋敷尚子】
<この国はどこへ行こうとしているのか> ◇思想をかけた議論を--東浩紀さん(40) 「子どもにとって学校とは、何年も友達と過ごす一つの世界です。突然、その世界から切り離されてしまった。これは暴力です」 哲学書が本棚に並ぶ静かな大学の研究室。作家であり、活発な評論活動で知られる論客、東浩紀さんは昨年4月、編集長をしている言論誌の取材で福島県浪江町に入った。その直後、福島第1原発から20キロ圏内が警戒区域に指定され、訪れた地域への立ち入りも禁止された。 「小学校には子どもたちのランドセルがそのまま残されていました。子どもたちの習字や工作も放置されたまま。誰もいない教室の光景が深く印象に残っています」 「この暴力は、原発事故が起こした。少なくとも地震と津波による単なる天災によるものではない」 被災地の話になると、言葉は熱を帯びてくる。 <震災でぼくたちはばらばらになってしまった> 昨年8月、言論
経済産業省原子力安全・保安院は2日、東日本大震災当日、東京電力福島第1原発1~3号機で全電源喪失などを想定し炉心溶融などを予測した「緊急時対策支援システム(ERSS)」の解析結果を、約半年たって公表した。2、3号機の予測は官邸に送信したが活用されず、1号機は送信もしていなかった。保安院の情報管理のずさんさが問われそうだ。 保安院によるとERSSを開発した原子力安全基盤機構(JNES)は3月11日、保安院の依頼でERSSを起動。同原発で全電源が断たれた事態を想定したパターンを使い、1~3号機の原子炉内の水位や圧力、温度が今後どう推移するかの予測結果を出した。 2号機のデータは11日午後9時半ごろ、JNESから保安院に届いた。保安院の職員はデータを基に「22時50分 炉心露出 24時50分 燃料溶融」など予想される展開を文章にし、同日午後10時45分ごろと12日午前0時過ぎ、危機管理センターに
英中西部セラフィールドの原子力施設にあるプルサーマル発電用のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料製造工場が近く閉鎖されることが3日、分かった。同工場を所有する英政府の外郭団体、原子力廃止措置機関(NDA)が明らかにした。 NDAは、福島第1原発事故の影響で、顧客である日本の電力会社が行うプルサーマル計画の先行きが不透明になったことを理由に挙げている。 NDAによると、同工場側と日本の電力会社各社との間で、将来の使用済み燃料の再利用とMOX燃料製造に関する大枠の合意があったが、特別な事情がある場合は合意を見直すことができるとの条項があるという。 同工場にとって現在は、日本の電力会社が唯一の顧客だった。NDAは日本側との詳しいやりとりは明らかにしていない。(ロンドン共同)
水路から重機でかき出したヘドロをより分け、行方不明者の手がかりを探す愛知県警の機動隊員=岩手県大槌町で、須賀川理撮影 「骨の一片でも、遺族の元に」--。東日本大震災の発生から4カ月経過してなお、被災地では5000人以上の行方が分からず、警察などが連日捜索を続けている。がれきで埋まった水路や建物跡で、ヘドロをさらい、細かい骨が交ざっていないか確認するなど、地道な作業の繰り返しだ。岩手県で最多の827人が行方不明となっている大槌町で、捜索活動に同行した。【松倉佑輔】 同町は津波で市街地がほぼ壊滅。12日現在、町内で見つかった死者は787人に上る。 9日午前9時、愛知県警の機動隊員約150人が3部隊に分かれ、市街地や漁港付近に散った。幅約2メートルの水路で、たまったヘドロやがれきをショベルカーがかき出し、マスクとゴーグルを着けた隊員がスコップで丹念にかき分けていく。 出てくるのは木材やトタンの破
【ウィーン樋口直樹】東京電力福島第1原発事故を受け、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)は原発事故の深刻さを示す国際評価尺度(INES)の見直しに着手する。現行の0から7までの8段階を細分化するなどして、事故による環境や健康への影響度をより実態にあった形で評価する考えだ。「レベル8」以上の新設や従来の「レベル7」までをさらに細かく分類する可能性がある。 IAEAの天野之弥事務局長は20日の閣僚級会議で「INESは重要な情報手段だ。しかし、福島第1原発事故については、INESの評価は役に立たないことが判明した」と述べ、INESの諮問委員会に尺度の改善を要請することを明らかにした。 福島事故は今年4月、史上最悪とされているチェルノブイリ原発事故(86年)と同じ「レベル7」に引き上げられたが、天野氏は事故の構造も周辺への影響度もチェルノブイリ事故に遠く及ばないとの見解を示してきた。評価尺度の
原発の法定検査に疑問符が浮かんだ。東京電力福島第1原発3号機の安全弁を巡る「原子力安全基盤機構」の検査ミス。東京電力のトラブル隠し(02年)を受け、検査強化を目的に設立された機構だが、東電からの指摘でやっと自らのミスに気付いた。「東電に頼り過ぎた」。検査員はそう反省したという。昼食代の一部を企業側に負担させてから検査に取りかかるケースもあり、元検査員の一人は「ガチンコ(真剣勝負)の検査員は多くない」と明かした。 08年12月、北九州市門司区のバルブメーカー工場。機構の検査員2人は、検査手法や手順を記した機構備えつけの「要領書」を手に東電やメーカーの担当者に機器を操作させ、検査を開始した。 検査は、通常運転時に安全弁が圧力容器から放射性物質を含んだ規定量以上の水蒸気を漏らさないかどうかをチェックするもの。水蒸気の代わりに窒素ガスを使い漏えい量の測定を行うため、窒素ガスの圧力が水蒸気であればど
爆発で大破した東京電力福島第1原発。左は3号機、中央奧は4号機=2011年3月15日撮影、東京電力提供 東日本大震災から3日後の3月14日午前、東京電力福島第1原発3号機原子炉建屋で水素爆発が起きた。菅直人首相ら政府首脳の協議は大激論となった。「避難指示を(半径20キロから)30キロ圏内まで広げるべきです」。内閣府原子力安全委員会側からの提案に、枝野幸男官房長官らは「30キロに拡大するのはいいが、屋内退避にとどめた方がいい」と反論した。 「30キロ避難」は大規模な避難計画の立案が必要になり、混乱する懸念があった。大勢の住民が避難中に再び爆発するリスクも考慮した。首相は枝野長官の主張を受け入れ、15日午前、「20~30キロ屋内退避」を発表した。 「屋内退避はせいぜい数日で終わる」。だが、政府高官の希望的観測は後に覆される。 「SPEEDIを走らせてはどうか」。16日、福山哲郎官房副長官は内閣
枝野幸男官房長官は4日午前のテレビ東京の番組で、菅直人首相の退陣時期について「そう遠くない時期に若い世代に引き継ぎたい、という思いははっきりしている。何月何日とは言えないが、そんなに長く居座る気持ちは首相にはまったくないと思っている」と述べた。首相が早期退陣を否定し、与野党から「居座り」と反発が広がる状況を収拾するため、退陣時期の目安を示す必要があると判断したとみられる。 また、首相が福島第1原発について「冷温停止の状態になることが一定のめどだ」と語ったことに関し、枝野氏は「同じ『めど』という言葉を使い、代議士会での発言と混同されている」と指摘し、退陣時期とは関連しないとの見方を示した。 枝野氏は番組後、記者団の質問に答え、9月の米国での日米首脳会談について「(首相は)出るとも出ないとも言っていない」と述べるにとどめた。 首相と鳩山由紀夫前首相との間での認識の食い違いに関しては番組内で「国
内閣不信任決議案が否決された2日、中央政界は大きく揺れ動いた一方、東日本大震災の被災地からは政争にかまける与野党に怒りの声が上がった。各地の動きを追った。 7・54 民主党の岡田克也幹事長が首相公邸に入り、菅直人首相と対応を協議。 8・45 同党の安住淳国対委員長が記者団に「内閣不信任決議案への賛成者は誰であっても除名となる」。 9・00 鳩山由紀夫前首相が東京都内の自宅前で記者団に「(不信任案賛成に)変わりはない。すべては国民のため。民主党を立て直さないとならない。こんな民主党にしたつもりはなかった」。 9・02 首相が公邸を出る。 9・07 小沢一郎民主党元代表が自宅を出て都内の個人事務所へ。 10・00 首相が官邸に戻るが記者団の問いかけには無言。 10・34 首相が国民新党の亀井静香代表と官邸で会談。亀井氏は震災対応にめどをつけた後の退陣を求める。 11・16 鳩山氏が平野博文元官
東日本大震災の発生直後に被災地を取材した何人もの記者から同じような体験談を聞いた。例えば。 東京から車でようやくたどり着いた民放の女性リポーターは避難所に行った。恐怖と混乱が続く中、テレビカメラを回すのをためらったが、被災者たちは文句も言わずに迎え入れてくれた。そして、あるおばあさんが、支給されていた数少ないおにぎりを一つ、差し出して言った。「あんたたちも何も食べていないだろうから」 迷った末、彼女はおにぎりをもらって食べた。取材中は涙を見せてはいけないと自分に言い聞かせた。でも、その日の宿泊場所となった車に戻ると夜通し、声を上げて泣き続けた。 週刊誌の男性記者は火葬場を取材した。そこにも大勢の被災者がいたが、迷惑がるどころか「ここまでよく話を聞きに来てくれた」と言ってくれた。彼も菓子パンをもらった。日ごろ厳しく、シニカルな見方を売り物にしている週刊誌で仕事している彼も涙が止まらなかった。
厚生労働省が、東京電力福島第1原発事故の復旧作業に携わる作業員に限り、年間50ミリシーベルトとしている被ばく線量の上限を撤廃することを決め、日本労働組合総連合会(連合)に文書で示していたことが分かった。定期検査時など通常の被ばく線量と合算し5年間で100ミリシーベルトの上限は維持する。現行のままでは、福島で作業後に他の原発の定検作業ができない可能性があるためだが、専門家からは作業員の安全を懸念する声も出ている。 厚労省は、積算で100ミリシーベルトとしていた緊急時の被ばく線量の上限を、福島の復旧作業に限り250ミリシーベルトに引き上げた。 一方、通常時の被ばく線量は年間50ミリシーベルト、5年間で100ミリシーベルトと変えていなかったが、他の原発の定検時と合算するかどうかは明確にしていなかった。4月28日の通達で、合算して5年間で100ミリシーベルトを超えない▽復旧作業に従事しない作業員は
◇対応に忙殺される職員 引き取り手ない遺体の骨拾う「おくりびと」まで 「今はまだ復興・復旧ビジョンを示すことはできない緊急対応期なんです。暗闇の中で、年内をひと区切りに『暗中八策』をまずやりたい」。福島県浪江町の馬場有(たもつ)町長(62)は、同県二本松市役所東和支所で、坂本龍馬が船中で起草した新国家構想「船中八策」になぞらえて、8項目の対策を記者に語った。 「東京電力が原子力損害賠償の相談窓口を設けているが、町独自の窓口を創設する。東電と町民個人の協議になると負けるので、行政が中に入って弁護団を結成しないといけない」「全国に拡散・避難している住民のきずなを強めないと。各避難所への情報伝達と仮設住宅の自治組織の強化をする」 どれも具体的だ。 浪江町は、福島第1原発の北西約31キロの赤宇木地区で累積線量30・68ミリシーベルト(17日現在)を観測するなど、北西方向の高濃度汚染をまともに被った
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