自分がMSCとか、SATELLITEとか、日本の「ギャングスタ・ラップ」を初めて聞いたとき、言葉は完璧に聞き取れるが、歌詞の意味は全く分からなかった。一聴平易な言葉遣いだが、ギャングスタの話法で語られるために、ストリートの外側には言葉が意味をなさない。それは「普通の言葉」に別の意味を重ねることによって、エリアの抗争・ドラッグディールといった内容を隠すことができる。彼らのダブルミーニング・比喩は、揉め事を回避するテクニックであり、ユーモアであり、エンターテインメントである。ここに紹介するUKのラッパー「ギグス」による最新ミックステープ『ワンプ・トゥ・デム(Wamp 2 Dem)』は、UK流の「ギャングスタ」の巧みな言葉遊びとストーリーを感じることができる。 ギグスを〈XL Recordings〉に紹介したマイク・スキナー(ザ・ストリーツ)は彼のことをこう表現した。 ギグスは突如として現れ、一