ロンドン五輪開幕の少し前、日本アマチュアボクシング連盟の山根明会長が怒っていた。ある席で一緒になったプロの某元世界チャンピオンに「どうして日本のアマは弱いんですか」と尋ねられた、失礼な話ではないかというのだ。 ロンドン五輪では清水聡、村田諒太が大活躍し、44年ぶりのメダリストが誕生した。日本アマチュアボクシング史上空前の成果を上げた大会として記憶されることだろう。そして今頃、某元世界チャンピオンは後悔しているに違いない。 これは偶然の産物ではない。確かに少し前まで「日本のアマチュアボクシングは弱い」は世間の常識だった。日本の五輪史上、ボクシングでのメダル獲得は僅かに3例、しかも同一大会に2人のメダリストが誕生したことなどなかった。メキシコ大会を最後にメダルとは無縁。それどころか近年は、世界の5地域ごとに出場権を争うように予選方式が改められてからは、代表がゼロになるのではとヒヤヒヤさせられた