ITベンダーの営業担当者は,厳しい競争を勝ち抜いて受注を目指すだけに,顧客に対して自社製品やサービスの利点ばかりを強調しがちだ。しかし,問題点に目をつぶった一方的な説明は顧客に不信感を抱かせるし,導入後の顧客満足度を下げる要因にもなる。 A君(27歳)は大手ベンダーのG社で5年間,サーバーやネットワーク機器といったハードウエアの法人向け営業を担当してきた。勉強熱心で,自社だけでなく他社製品のスペックや価格にも精通していることから顧客に重宝がられ,部内では「若手ナンバーワン」と言われるほどの実績を上げていた。 しかしここ数年,ハードウエアの販売価格は大幅に下落。全体の営業利益は落ち込む一方だった。会社側は対策として,月間売上目標額の引き上げを打ち出した。こうして営業担当者のノルマはきつくなり,残業や休日出勤も当たり前になった。といっても,給料やボーナスは現状維持。A君は,努力をしても報われな