世界でどんな風に屠畜をおこない(つまり、家畜を殺し)、食べているのかを追ったイラスト入りのルポ。屠畜の現場に対する興味に突き動かされているだけでなく「なぜ、日本においては屠畜に関わる人々に対する差別があるのか?(そして、それは他の国にもあるのか?)」という著者の問題意識がこの本の根底を貫いている。屠畜から食文化だけでなくその国の文化全体そして、取材した人々から国に流れている雰囲気のようなものを捉えているのがすごいと思ったし、職業差別の問題から社会構造についてもシャープに描いている。 家畜を殺して食べるのは「可哀想」と考える人たちがいる。多くの日本人は、動物可哀想主義への共感がある、と思う。そういう考え方、理解できるよ、と。でも、多くの人は、わかっていながら、うまい、うまい、と言って、動物の肉を食べている。「どうして可哀想なのに、食べられるの?」と、そのへんのジレンマというか、矛盾した部分を