※山括弧〈〉内の文字はルビを表します。 いささか乱暴な物言いになるが、候補作はいずれも、偶然(?)にも、広い意味でのビルドゥングスロマン、つまり主人公(たち)の人間的成長の過程を描いた「教養小説」ないしは「自己形成小説」と私には読めた。加えて、それらはいずれも主人公たちによる、彼女らにとっての原初的、始原的な問いについての、集合的かつ共同的思索の試みのシークエンスでもあり、哲学すること(philosophizing)の実践でもあった。そうした試みの末に彼女たちが到達する(あるいは遠く指し示す)場所〈トポス〉の風景はそれぞれに異なり、私にとってどの風景が一番好ましいか、最終的にはそれが選考理由になったと正直に白状すべきだろう。(これらの素晴らしい作品群を前に、「優劣」を語るのは虚しく愚かしい。)ここで「好ましさ」とは、審美的、思想的、技術的など様々な意味合いを含むが、ジェンダーへの慮〈おもん