今年の NHK の大河ドラマは、坂本龍馬が主人公らしい。そのせいか「私は坂本龍馬になりたい」とか言う政治家が出てきたり、龍馬の話題で日本はなかなかにぎやかなようである。私は、歴史小説家の司馬遼太郎のファンで、彼の作品「竜馬がゆく」は昔からの愛読書であった。 幕末の志士たちの、自己の利害を超えた清々しい生きざまは、多くの日本人たちを魅了してきた。いまの日本の経済的・社会的危機を幕末になぞらえ、ふたたび「明治維新」の出現を期待する向きもある。 だが、残念ながら、このままでは日本に「明治維新」はやってこないだろう。 なぜか。 明治維新というは、一見狂った運動である。なぜかといえば、支配階級である武士たちが、自らその存立基盤である封建社会を破壊してしまったからである。(実際、そのことに不満をもった旧武士階層が、西南戦争を起こすに至るのだが) そこには「天皇こそが日本の正当な統治者である」と主張する